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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 
 
 はらはらと涙を零しながら、ナツは言った。



「苦しいほど、昔からしーちゃんだけが……」



 だからあたしは……、ナツの唇に口づけた。

 
 愛おしいって、こういうことを言うのだろう。

 その口から紡がれる切なる心に、直に触れたくて。



「ナツ……信じてあげずにごめんなさい。

仲直りの……ちゅう。大好きの……ちゅう。

いっぱいいっぱい、ちゅうしよう?」


 あたしから、何度も何度もナツにキスをした。


「ん……っ、んんっ……」


 まるでいつものあたしのように、ナツは息を乱して喘ぎ声を漏らした。

 ナツをもっと可愛く啼かせたくて、角度を変えて何度もナツにキスをすれば、ナツが苦しげに息をして唇を開く。

 あたしはナツの膝の上に乗り、上から覆い被さるようにして、ナツの唇の隙間から舌をねじ込ませた。



 攻守逆転、上等。


 両手でミルクティー色の柔らかい髪の毛を掻き乱しながら、激しく舌をナツの舌に絡ませれば……ナツが色っぽい声を出して、あたしの首に手を回してくる。


 防戦一方だったナツの舌が、おずおずと動き……あたしの舌を絡め取る。


「ん、んふ……ぅっ」

「ん……んんっ……」


 揺れる、揺れる。


 体も心も。



 ナツが欲しい。

 ナツが欲しい。

 ナツが欲しい。

  
 心臓がどくどく脈打っている。


 苦しくなり唇を一度離すと、あたしたちは銀糸でつながっていた。

 肩で息をしてそれをぼんやりと見つめながら、蜜をまぶしたようにとろりとしている目のナツを見た。


 薄幸の美少女ともいえるほどに儚げだった美麗な顔は、すでに男の艶香を纏い、涙の代わりに情欲で瞳を濡らしている。


 求められていることがわかるその顔に、ぞくりとした。


 ナツがあたしを誘うように、絡めあったばかりの舌先をちろちろと出してくると、あたしの脳は痺れたようになにも考えられなくなる。


 恍惚と苦悶を半々にさせたような男の顔で、ナツが顔を傾けながらあたしに近づいて来れば、あたしもまた舌を伸ばしてナツの舌を求める。


 舌先だけがつつきあうように絡みあう――。


 探り合いのようなその動きがもどかしくて顔を近づけば、ナツはふっと妖しく笑いながら顔を引き、あくまで舌先だけの戯れを続行させた。


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