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目が覚めたら。
第4章 鬼畜帝王は×××でした。


 ほろり。


 あたしは流れる涙を隠すように、ハル兄の白衣にしがみついた。



「こうやって、あたしの彼氏も……消えていたの?」



 あたしの頭を撫でるハル兄の掌が、すごく温かかった。

 その手を掴んで、あたしは頬に当てて泣いた。


「シズ……」


 ハル兄の指があたしの目許を拭う。

 そして……視線が絡み合った瞬間――。


 どくんっ。


 また、来たんだ。


「ぁ……っ」

「………」


 ハル兄はなにも言わず、あたしを見ている。

 悲しげに、苦しげに。

 それは煩悶する男の表情で。



「ハル……兄……」



 助けを求めるようにハル兄の手を強く握ると、より一層……過敏になった体に刺激が走り、あたしは甘い声で喘いだ。


 ねぇ、どうしてあたしの体は感じてしまうの?

 ねぇ、どうして体が熱くなってしまうの?


 どんな感情にも勝り、あたしの体が――目の前に居る、この美しい帝王を求めている。

 逞しいこの腕で、あたしをもっと触って欲しいと望んでいる。

 貪りたくて仕方が無い。


 カチ、カチッ。


 どこかであたしのスイッチが入る音が聞こえるんだ。

 どこかでもうひとりのあたしの声が聞こえるんだ。


 "お腹がすいたでしょう? お口直しにおいしいお食事したいでしょう?"


 ああ、頭の中がぐちゃぐちゃだ。

 同時に熱い体が渇望している。

 欲しくて欲しくてたまらない、極上の餌の匂い。


 嫌だと思うのに。

 ハル兄を餌だなんて見たくはないのに。


 弱った心に、欲はつけこみ……膨れあがる。


 ねぇ、ハル兄なら……あたしを助けてくれるでしょう?

 ハル兄なら、わかってくれるよね?



 だから、だからあたしは言ったんだ。



「ハル兄……同情でいいから。愛なんて求めないから。

だからお願い――」


 どこか苦しげな息をしながら、あたしを見つめるハル兄に。

 あたしと同じような、熱を帯びた目をしている帝王に。



「あたしを抱いて?

ハル兄で、記憶を上書きして……?」



 それで解決する問題ではなくとも。



「体が……熱いの」


 ハル兄に染められた今のあたしは――。



「それとも、あたしは汚い……?」



 このままハル兄の中で、安心して夢を見たいから。


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