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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
 

『サクラ、外線かけた本来の用件はメールする』



「え? 本来の用件って、あたしを心配して電話したんじゃなくて?」


『お前は"ついで"だ』


「なんですと――っ!?」


『お前、俺様の優しさに"きゅん"となっただろう。そうだものな、俺様の名を呟くほど、俺様に会いたい"甘えたがり"だものな』


 先ほどとは打ってかわり、いつも通りの帝王。

 いつも通りというか、いつも以上にやけに嬉しそうだ。


 人を騙して嬉しそうとはいかに。いかに!!


「あたしは別に――」


 反論を遮ったのはハル兄の声。

 そこには上擦ったものなどなにもない、真剣な声音で。



『そうやって、俺様のことを考えて悶えてろ。

一分一秒……、どんなに忙しくても俺のように』



 ブチッ。ツーツー……。


 今度はよくわかる、一方的すぎる"終焉"。



「あの人嫌、あの人嫌あああああ!!」




「あのひとを抱こうとするナツのために、あのひとから波瑠さんの憂いを引き摺らせないようにと、俺を"ついで"に使ったか。だけど不器用な波瑠さんらしい。……一分一秒、どんなに忙しくても、あのひとのことを想っているのか。あのひとはそこに気づいてはいないみたいだけど……」



 そんなモモちゃんの呟きは、絶叫するあたしには届かず。

 そして、更衣室にあるモモちゃんのスマホに届けられていたハル兄のメール内容にも、当然気づくことなかった。


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