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目が覚めたら。
第4章 鬼畜帝王は×××でした。
  

 12年経っても変わらない、武骨に見える大きな手。

 この手は過去幾度も女を愛し、気に入らない者を殴り、かなりの数のタバコを支え、医者として誰かを助け、そしてその中でほんのちょっぴりあたしやナツの頭を撫でた。


 愛着あるこの手が、今……ひとりの男としてあたしの胸を愛撫している。

 ハル兄の手の中で、形を変えるあたしの乳房。

 胸の蕾がハル兄の指に擦れて、体の芯までじんじんと感じてしまうあたしは、嫌でも女なんだと認識させられる。



「あっ、あっ……ハル兄、ああっ」 


 粟立つ肌は、胸の上を行き来するハル兄の舌で鎮められる。

 ……否、煽られる。



 全ての快感は下腹部を直撃して、どろどろとしたもので蕩けそうだ。

 あたしはどうなってしまうのだろう。


 ハル兄が身悶えるあたしをじっと見つめていた。


 ぎらついた光の中に、なにかが切なげに揺れているのが見える。

 だけど今のあたしには、それが何かを追及する気力はない。


 ただ……ハル兄の瞳に囚われるだけ。

 ただ……視線を外せないだけ。


 熱い視線を交差したまま、昂ぶった荒い息づかいが場に響く。

 視界の中、また一段とハル兄の手が力強くあたしの乳房を揉み込んだ。


 ……きっと気のせいだ。ハル兄の方が息が荒いなんて。

 ハル兄は百戦錬磨の、サバンナの帝王だ。

 ねだってねだってようやくこうして貰えたくらい、あたしには興味を示さなかった男なのだから。


 ねぇ、もっと。

 もっと強くあたしを触って。


「ハル兄……あたしをめちゃくちゃにして――?」


 現状維持に焦れた、懇願。

 もっと一気に上り詰めたいという意思表示。


 壁についたままのハル兄の片手を外して、その指先を口に含んだ。

 甘く感じるハル兄の指先。

 舌で舐めれば、ハル兄の眉間に皺が寄る。


 それを陶然と見つめながら、あたしは微笑む。


「……っ」


 絡めた視線を先に外したのは、不機嫌そうな顔つきになったハル兄の方だった。
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