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目が覚めたら。
第1章 貴方は誰ですか。
 




 再び目が覚めたら――。



「おはよう。気分悪くない?」



 顔を覗き込んでいたのは、色素の薄い……白皙の王子様。

 極上に整った甘いマスクで、彼は嬉しそうに柔らかに微笑む。


 そのキラキラ王子スマイルに、思わずあたしの顔が熱くなった。


「なにか飲みたい? 牛乳? 牛乳? それとも――」


 やけに牛乳を繰り返す王子様は、爽やかさ満開の笑みに、腰砕けになりそうな艶を滲ませて言った。


「僕の精液? ……いいよ? 点滴外れちゃったものね」


――!!!?


「やめぇぇいっ!! 嬉しそうにチャックに手をかけるな、この変態っ!!」


 あたしの右手が、変態王子の左頬に炸裂っ!!


 ぐーではなくぱーであっただけ、マシだと思え。


 その震動で、彼が今まで座っていたらしい椅子から、彼が読んでいたらしい本が床に落ちた。

 やがて折り目がついた頁の、やけに大きい文字で書かれた章題が目に入る。


『少しでも長く保ちながら、ナカで女をイカせるテクニック』



「こんなところで、いかがわしい本を読むなっ!!!」


 今度は左のぐーにて右頬にストレート。



 目が覚めたら――。

 そこにいたのは、外貌を裏切る……残念すぎる変態王子様だった。



 ……寝ても覚めても、依然――……

 記憶と直結している受け入れがたい光景は続いているようだ。



 しかも二度醒めたら、ハナタレクソデブ……いや、似非(えせ)王子の変態度がパワーアップしているように思える。


 これなら寝てもいられない。

 目覚める度にパワーアップされては、こいつはすぐに突きつけた変態になってしまう。


 勿体ない。この顔でこの中身は、あまりに残念すぎる。

 仕方が無い……。


 あたしは指の骨をぽきぽきと鳴らした。

 矯正、開始――。



 カーン……。


 どこかでゴングが鳴った。



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