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可愛いヒモの育て方。
第8章 芽生え
「うん、だから――」
麻人は不敵に笑った。
「どれが嘘で、強がりで、本音か、俺が見つけて判断します」
「はあ?」
私は首をかしげた。
「友梨香さんの言葉の全てを、鵜呑みにはしません」
「……はあ、まあ別にいいけど。変な子だね、あんたって。嘘と本音と強がりなんて、見破って何になるの?」
「……なんなんすかね。でもよくわかんないから、逆に知りたくなる。友梨香さんのこと。なんかムカつく、いろいろ」
麻人が不意に車線変更した。近くのパーキングへと、入っていく。
「おせんべつまんだらお腹すきました。昼にしましょ」
「あ、うん」
パーキングの駐車場で車を停める間、ただぼんやりと麻人の横顔を眺めていた。
私を天の邪鬼だと言うけれど、私には、麻人の方がわからない。何を考えているのかも、本音がどこにあるのかも。
だけど、わからないから知りたくなる。その部分にだけは、共感できる気がした。
「寒っ」
快適に温度調節された車を降りると、やっぱりかなり寒い。コートを羽織った私の手を、麻人は掴んできた。
「何食べましょうか」
「さっぱりしたものがいいなぁ」
「じゃあ、うどんにします?」
「いいね! 賛成ー」
自然と手は繋いだまま。私たちは店の中へと歩いていく。
ふと空を見上げると、快晴だった。何かを予感させるような、そんな空だった。
旅行の終幕にはちょうどいい。
心地よい疲れと、新たな予感を胸に、一泊二日の温泉旅行は幕を閉じようとしていた――。