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可愛いヒモの育て方。
第12章 来客
キッチンのドアから顔を覗かせ、麻人がそう声を張った。普段呑気な麻人が、珍しく焦った様子で。
「は!? 嘘でしょ! まだ六時半だよ!」
土日ならともかく、平日の夜にこの客入りは異常なレベルだった。
「あと三席なんすけど。片付けと、今オーダーも間に合わなくて! キッチンも、オーダー処理二十近く溜まってるっぽいです」
「わかったすぐ行く」
一礼して店長室を出る。麻人をキッチンに入れて、どうにかホールをまわすか。ホール担当はあと二人いるけれど、二人とも二月に入りたての新人だった。果たしてまわるか。だけどキッチンも、まったく間に合ってない状態だし、ヘルプがいる。
だったら、慣れないホールに麻人を置いておくより、キッチンに入れてまわした方がいいのではと思った。
その時だった。
「おまえらホール行けよ。俺がキッチン入る」
店長が立ち上がった。土日のピーク時以外あまり表(おもて)に出ない店長が、営業にまわるのは珍しい。だいぶ助かる。
「はい!」
声を揃えてそう返事をし、慌ただしく営業へと戻った。