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可愛いヒモの育て方。
第15章 喫茶店
しばらくバイトは、がっつりお休みします。
その言葉通り、麻人はシフトが入っているにもかかわらず、ほとんど店に来なくなった。
「……たく。就活だかなんだか知らないが、シフト入れてる分くらいちゃんと出勤しろよなー」
「本当に」
店長がぶつくさ文句を言う横で、私もこくこくと頷いた。やっとピークが終わり、事務仕事をしに裏へとまわってこれたけど、発注にシフト表作り、マネージャーへのメール返信、報告書。やらなければいけない仕事が多すぎて、しばらくは帰れない。
「ちょっと休憩しましょう、店長。脳に栄養与えないと」
私は休憩室からクッキーを持ってきて、店長に差し出した。
「さんきゅ」
受け取った菓子をぼりぼりと食べながら、ため息をつく。
「君島も、こういうところはちゃっかりしてるよな」
「しっかりじゃなくて、ちゃっかりなんですね」
苦笑しながら、確かに、と思う。
他県で就活するため、バイトをお休みさせてください。そう言いにきたとき、このクッキーを持ってきた。シフトをもう作ってあったのと、繁忙期で人手不足だったのもあって、最初はかなり麻人にむかついていたみたいだけど、屈託のない笑顔とごめんなさいに、怒る気も削がれてしまったようだった。