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可愛いヒモの育て方。
第15章 喫茶店

 クビにもせずきつい嫌味を言うこともなく、麻人の休みを了承していた。珍しい。 
 店長はホットコーヒーを淹れながら、ぼそりと言った。

「このクッキー、俺の好物なんだよ。多分前一緒に組んだ時、話してたんかな。覚えてねーんだけど」「へー、店長甘党ですもんね。クッキーとか、こういう時の定番じゃないですか。偶然かぶっただけじゃないですか?」
「そうじゃねーよ。クッキーが好物なんじゃなくて、このクッキーが好物なんだよ。これ、ここから一時間近く離れた喫茶店で手作りしてるクッキーだから。そこでしか売ってない」
「そうなんですか!?」

 言われてみれば、確かに包装もシンプルだし、クッキーの形もなんというか、手作り感がある。味はバニラとチョコの二種。それも、シンプルといえばシンプルだし。
 わざわざ遠くの店まで行って、自分の好物を買ってこられたら、さすがの俺様店長もあまり酷くは言えなくなるか。そういう計算も、麻人らしい。

「抜け目ないですね」
「まったくだ」

 私は苦笑した。実際のところ、店はどうにかまわっている。私や店長が麻人の分のシフトを埋めたり、二月に雇った新人の子が覚えの早い子ばかりだったのもあって、ずいぶん助けられている。
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