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可愛いヒモの育て方。
第15章 喫茶店

そんなことを言われても。紅茶を飲みたい気分でもなかった。
それでも促されるまま一口飲む。
「美味しい……」
自然とそんな言葉が、口をついて出ていた。
「だから言ってんだろ? クッキーじゃなくて、この茶葉土産に買ってけば?」
冗談半分のマサルのセールストーク。一瞬本気で迷うほど、紅茶は美味しかった。
マサルはまた私の横に立っていた。カウンターに戻ろうともしない。
私の反応を見て、面白がる気なのかと思うと腹が立つ。
沈黙の中、ゆったりとした音楽が喫茶店内を満たしていた。
「……あんたは遊びでも、私は本気だったんだよ」
視線はティーカップに向いたまま。そんなつもりはないのに、自分の耳にも若干恨みがましく聞こえてしまって嫌だった。
だけどマサルに言いたいことがあるとすれば、多分それだけだ。
ーーあの頃のマサルとの恋愛が、まやかしだったのかどうか。
たった数ヶ月、ほとんどマサルの部屋でヤってばかりの日々だったけど、それでも私は本気だった。本気で恋愛していたし、本気でマサルが好きだった。

