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可愛いヒモの育て方。
第16章 削除

 家に着くなり、私は彩乃に報告メールを送った。
 マサルに会いにいったこと。数分で、電話が鳴ったけど、それは取らなかった。彩乃にはあとで話す。心配してくれていたし。
 何より先に、一つだけやっておきたいことがあった。
 私はパソコンを開いた。今まで書いた小説が並ぶフォルダを開く。
 麻人に時々覗かれるようになってから、見つけられないよう隠していた。最近は忙しくて、ずっと手付かずだったけど。
 だけど今日は、書くためではなく、削除するためにそれを開いた。

「懐かしいなぁ」

 ずっと昔に書いた恋愛物の小説。あの頃は、相手の男はすべてマサルがベースだった。短編も長編も。切ないものもそうでないものも。わざと似せていたものもあったし、意識しなくても、自然と似てしまっていたものもあった。
 画面をスクロールしながら雑多に並んだ小説を見ていると、それを書いていた頃の記憶が鮮明に蘇ってくる。
 私は適当にその一つを開き、軽く読んだ。脳内で捏造し、理想や偽装で塗り固めたマサルが、そこにはたくさんいるのだ。妙に美化されていたり、逆に酷い男だったり。
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