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可愛いヒモの育て方。
第16章 削除
「コラ! 読むな! 拝読料取るぞ!」
麻人が顔をあげる。心なしか真面目な顔で、私を振り向いた。
「これ……、なんかだいぶ減ってないすか? 小説の数」
「え?」
「あ、中身はパラパラとしか見てないですよ。前もっと数ありましたよね? ……消しちゃったんですか?」
「あー……、うん。さっき整理してたの」
「なんで消したんすか? せっかく書いたのに」
問われて、とっさに言葉に詰まってしまう。マサル絡みの話は、麻人にはあまりしたくなかった。
「……なんかあったんですか?」
そのセリフに驚く。心配そうに私を見つめてくる麻人の目に、何かを見透かされた気がして。
「なーんでもないって。古いの削除しただけ。やっぱ、昔書いた文章って見るに耐えないものがあるんだよ。そういうの一掃したくなったの」
私は麻人の体を押しのけ、パソコンを閉じた。
麻人の顔は見なかった。少しの間黙っていた麻人は、苦笑を浮かべて一言。
「部屋の掃除ほったらかして、そっち先っすか」
「もう、またそれ! 今度からちゃんとするってば」
「はいはい。ご飯作ってきますね」
「お願いしまーす!」
麻人はキッチンへと向かった。私はほっと、胸を撫で下ろした。