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可愛いヒモの育て方。
第2章 ポスティング、参戦!
それこそ、今さらすぎる気がするが。
だけどそこまで言って、口を噤んだ。私の脳裏に、ずっと昔にしたある男とのやり取りが蘇る。
――ねえ、あなたのこと教えてよ。
――なんで?
――だって私、なんにも知らないもん。あなたが大好きだから、いろんなこといっぱい知りたい。
その頃の私は、今よりずっと恋愛に貪欲だった。私は彼が欲しかったし、彼の彼女という特別な居場所を手に入れて、舞い上がっていたのかもしれない。他の誰より彼を知りたいと願ったし、当然そうする権利が自分にあるのだと思っていた。
そんな私に彼が告げた言葉は、あまりに残酷だった。
――知ってどうすんだよ。名前と、部屋だけ知ってれば、あとはどうでもいいだろ? どうせ別れりゃ、他人に戻るんだから。必死になって知ろうとする必要はないんだよ。
拒絶。
突き放すような言葉は、なぜかとても優しい響きを持って私の胸をえぐった。
あの時私は高校生、彼は十個も年上の人だった。今ならわかる。私がどれだけ夢中でも、決して長続きはしない恋だと。今思えば、ただ遊ばれていただけだったようにも思える。