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可愛いヒモの育て方。
第19章 キズ

「はーい! 了解です」
「よろしくな」
いつもなら、用件が終わればすぐに電話を切る店長だけど、その時は切らなかった。電話越しに沈黙が続く。
「あの、他にも何か?」
「あ、いや……」
何か言いたげに押し黙る。
「はい?」
「まあ、いいや。じゃあ、おやすみ」
何その、歯切れの悪い切り方。ふいに思いつき、私から店長を呼び止めた。
「あの……っ」
「ん?」
「今日はお店混みましたか? その、終わるの……、遅かったりとか」
「いや、暇だったよ。別におまえがいなくても全然まわってたから、大丈夫だよ」
店長は多分、私が店を休んでしまい、ホールに不慣れな麻人を代わりに出勤させたから、私が店の状況を心配して聞いたのだと思ったらしい。一見嫌味にも受け止められる言い方だけど、私を安心させるための言葉というのは、店長の性格を知っている私にはわかった。
だけどそこの心配ではなかった。
「……そうですか」
やっぱり麻人は、こっちに寄るのが単純に面倒になって帰っちゃっただけなのかな。
「まあでも、終わるのは遅かったかな。君島が、途中で抜けたから」
「……え?」

