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可愛いヒモの育て方。
第19章 キズ
私は電話越しに首をかしげた。
「ラストまでいなかったんですか?」
どうして? 一時からラストって、ちゃんと伝えたはずなのに。
「……病院に行くんで帰したんだよ」
「病院!?」
思いがけない単語に、つい口調も強くなる。
「なんで? 麻人、どっか怪我でもしたんですか……?」
寝不足とはいえ、昼間は元気だったはず。電話だから意味がないとわかっていても、無意識に身を乗り出していた。
店長は、私の口調に驚いたらしくわずかに息を呑む気配がした。
「いや、あいつじゃねーよ。君島の母親が、救急車で病院に運ばれたんだと」
「……お母さん?」
どういう事態か呑み込めない。なんで麻人のお母さんが?
「前にさ、あいつのことを尋ねてきた電話があったよな? ストーカーじゃないのかって言ってたやつ」
「……はい」
唐突に持ち出された話題に困惑しつつも相づちを打つ。
「今日もきた、その電話。ーーおまえさ、何か知ってる?」
低い声が鼓膜を震わせる。電話の相手が誰なのかは知っている。あの時無理矢理麻人の携帯の留守電を聞いてしまったから。