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可愛いヒモの育て方。
第19章 キズ
「なんにも知りません……っ」
気づけば声を張り上げていた。自分の剣幕に、私自身が驚いてしまい、小さくすみませんと謝った。突然の大声に、多分店長も驚いている。
「私は何も……、聞いてません」
絞り出すように、そう付け加える。
言ってて悔しくなった。そうだ、私は麻人のことを何も知らない。だってあいつは、何も話してくれない。ちゃっかりアパートに上がり込んできて、いつの間にか居座って。そういう関係が当たり前みたいになったって、自分のことは何一つ話してくれなかった。
私のことは、ずけずけと聞いてくるくせに。
ーームカつく。
「どこの病院ですか?」
「知るか、アホ。知りたいなら聞けよ、自分で。あいつ本人に」
冷めた口調で告げられ、声を張ってしまった自分が急に恥ずかしくなった。店長には関係ない問題なのに。
あと、名前。下の名前で、しかも呼び捨てにしてしまった。
「すみません……」
確かにそうだ。私も何も、あいつに聞かなかった。
「ありがとうございます。聞いてみます」
挨拶も早々に、通話を切った。