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可愛いヒモの育て方。
第19章 キズ
だけどそれを勝手に他人(ひと)に話すのは酷い気がして、何も言えなかった。
押し黙る私に、それ以上聞いては来なかった。
「まあ、別にストーカーとかそういうんじゃないなら、どうでもいいけどな。電話も俺が取ったわけじゃねーし」
「……彼の、お母さんなんです。相手」
「え?」
事情全てを話すわけにはいかない。だけどストーカーではない、麻人に危害をくわえるような危険な存在ではないということだけは証明したくて、それだけ伝えた。
「……そうか」
一言だけ。それ以上、電話の件については聞いて来なかった。
一体どんな電話だったのだろう。あの時留守電に入っていたやつのように、悲壮な声で麻人を求めていたのだろうか。思い出すだけで、身震いしそうだった。
「どうして麻人のお母さん、病院に?」
「……さぁな。総合病院から店に連絡があって、君島に渡したら、ちょっとして、母親が運ばれたから帰らせてください! って、青ざめた顔で頭下げてきたんだよ。病気か事故か、何も聞いてない。俺よりおまえの方が、いろいろ知ってるだろ? 君島のこと。何か思い当たらないのか?」