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可愛いヒモの育て方。
第19章 キズ
「ーー好きだからだよ! 麻人が好きだから……っ、時々、どうしようもなくなるんだよ! 何かできることしてあげたくて、話も聞いてあげたくて。お母さんのことも……っ、つらいなら言ってよ!」
そこで声がひっくり返り、言葉が続かなくなる。
私に何ができるかなんてわからない。だけどできることなら、なんでもしてあげたい。
今麻人がそばにいたら、きつと強く抱きしめていた。
言葉に上手くできない感情が溢れだし、どうしようもない気持ちにさせた。
「……ありがとう」
小さな呟きと共に、かすかに笑ったような気配がした。だけどそれは、いつものようにからかいを含んだものじゃない。
その響きに、視界が歪む。
「友梨香さん、一つお願い、聞いてくれますか?」
「……何よ?」
麻人はある病院の名前を挙げた。うちから三十分ほどの場所にある、総合病院だ。
「……会いにきて」
ささやくような声量で、そう一言。頼りなげな声に、胸が痛む。
「わかった。すぐ出るから待ってて」
病院に独り、心細くないはずがない。鍵と携帯と財布だけ持ち、上着を羽織って私はすぐに病院に向かった。