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可愛いヒモの育て方。
第19章 キズ
「傷?」
麻人は軽く首をかしげ、右手で自分の首の辺りに触れた。
自然と私の目は、彼の右手に行く。
「ねえ、手首も……」
右手首にも同じように、細くて赤い傷があった。首より手首の方がひどい。皮が剥けて、血が出ていた。血はもう固まっていたけれど。
こんなの、私のアパートを出た時にはなかった。
麻人は手首にも視線を落とし、ああ、と短くつぶやいた。
「ちょっとさっき、モメちゃって……」
「モメたって、お母さんと?」
「はい」
そんな。
麻人の言葉を、不審に思わずにはいられない。だって麻人の首や手首に残った傷は、『ちょっとモメた』くらいでできるようなものには思えない。
私は彼の手首をそっと掴んだ。
「痛くない?」
「全然」
赤く鬱血した痕。手首を強く掴まれ、爪か何かで引っ掛かれた痕だということは、素人目に見てもすぐにわかった。
その手を今度は彼の首もとへ持っていく。指の痕みたいだった。
「首、絞められたの?」
麻人は何も言わなかったけれど、否定もしなかった。
「だってお母さんでしょ……?」