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可愛いヒモの育て方。
第19章 キズ
ーーそんなの、嫌だ。
私は弾かれたように、廊下をかけだした。麻人の姿はすでに見えない。
さっき上がってきた階段を、今度はかけ降りた。
階段にもすでに麻人の影はなかった。病院の匂いが嫌だと言っていたから、きっと外に向かったはず。この時間に開いている出入り口は、多分私が入ってきたあそこしかない。
「院内は走らないでください!」
すれ違った白い影が注意を促すけれど、私の耳には届かなかった。
深夜の閑散とした病院を飛び出し辺りを見渡しても、だだっ広い駐車場に麻人の姿はない。
私は気配を探るように、ゆっくり何歩か歩みを進めた。
壁に面した敷地内の右手に、ようやく麻人の後ろ姿を見つけた。
「麻人……っ!」
私は駆け出し、後ろからその背を抱きしめた。
腕を掴んでもまた振り払われそうだから、その小柄な体ごと、すっぽりと私の腕の中におさめてしまう。
「友、梨香さんっ」
私の腕から逃れようともがく麻人を、さらにきつく抱きしめた。
パーカー越しの体温だけじゃ足りなくて、赤く筋の入った首に、頬を押しつけた。