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可愛いヒモの育て方。
第20章 好転

 ようやく興奮が冷め、落ち着き始めた頃。
 駐車場に一台の車が入ってきた。きちんと駐車する前に車の助手席から出てきたのは、まだ産まれて間もない赤ん坊を抱き抱えた麻人のお姉さんだった。お姉さんの顔を見たことはなかったけれど、こんな時間に病院を訪れる人なんて他にいない。ましてや赤ん坊連れなんて。だからすぐにわかった。運転手は、多分彼女の旦那さん。
 私は慌てて涙を拭い、鼻水を引っ込めようと必死だった。

「麻人……!」
「……姉ちゃん」

 やっぱり麻人のお姉さんだ。お姉さんは、今の状況が上手く飲み込めないようだった。
 それはそうだろう。麻人の隣には見知らぬ女の私がいて、二人とも泣いたあとで顔もぐしゃぐしゃなんだから。
 お姉さんは近づいてくるなり私に頭を下げた。すぐに麻人に向き直る。

「どうしたのその顔……、母さん、そんなに悪いの!?」

 麻人は首を振り、微かに笑った。

「ううん、なんでもない。切った手首もたいしたことないって。今は病室で寝てる。案内するよ……」

 ふいに抱き抱えた赤ん坊が、無垢な顔をして両手をあげた。
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