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可愛いヒモの育て方。
第20章 好転
「いや、私はなんにも……」
しおらしく、改まった様子で礼を言われると返答に困ってしまう。
そういえば、麻人のお姉さんにもちゃんとした挨拶ができなかった。逃げるように帰ってきてしまい、反省。そこはちゃんと、大人として、ねえ?
「……わんわんわんわん泣いてましたもんね。いい大人が」
「それは麻人も一緒でしょ!」
「えーなんのことー?」
麻人はわざとらしく、小首をかしげる。
「泣いてなんかないですよー。友梨香さんお得意の、妄想じゃないですかー?」
「うざっ!」
そこで思い出す。手首と首の傷は、治ったのだろうか。
首に目を向ける。まだうっすらと残る赤い痕。もう痣みたいになって、赤というより紫に近い。右手を掴んで右手首も見ると、首よりも濃い痣で、引っ掻かれた場所はかさぶたになっていた。
私は麻人の手首にそっと唇を押しつけた。舌でかさぶたをペロペロと舐める。
不意打ちに体をびくつかせた麻人の顔を見上げ、短く言った。
「消毒」
「……それ、絶対意味ないですから!」
麻人が顔を赤らめ、私を睨んでくる。少し照れた表情は、可愛い。