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可愛いヒモの育て方。
第21章 好きな人

「……ちょっとだからね?」
「はい」

 麻人は憎らしいくらいに楽しげな笑みを浮かべ、私の手に巻かれた縄をほどいた。

「来て」

 促され、ベッドから下ろされる。そのまま脱衣所の方へ連れていかれ、私は首をかしげた。

「どこでする気?」

 お風呂で? 疑問に思う私に、麻人は指を差して答えを示した。

「え?」

 そこは、全身鏡の前だった。アパートに全身鏡は脱衣所しかなくて、これもほとんど普段使っていない。埃まみれだったのを、数日前の大掃除の時についでに綺麗にしておいたのだけど。

「や、やだよ! 鏡の前で縛られるのなんて!」
「なんでですか?」
「なんでって……」

 自分の恥ずかしい姿が、いやでも目に入ってしまう。

「どんなふうに縄を巻かれたかとか、ちゃんと見える方が安心できません? 俺の手つきとかも、見れる方が。立たないとできない縛り方みたいだし」
「あ、それでわざわざ鏡の前を選んだの?」

 てっきり別の目的を想像してしまった私は、ああ、と納得した。

「はい。他に理由なんてあります? 何を想像してたんですか?」
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