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姫はひそやかに咲き乱れる~戦国恋華【れんか】~
第3章 転機
 時のうつろうのは本当に早いものだ。徳姫が永尾城に輿入れしてから、既に四月(よつき)を数えようとしている。この地に着いた日は、まだ蒸し暑く、蝉の声さえ聞こえていたのに、今は身も凍るような冷たい風が吹く真冬である。
 空しくはあったが、穏やかに流れてゆく日々の中で、時折、ぽっかりと水面に顔を出すように思い浮かぶのは、あの男(ひと)の面影であった。忘れようとしても、なお忘れられない男、いや、忘れようとすればするほど、いっそう鮮やかに心に甦る愛しい面影。
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