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第1章 始まりはいつも雨

　徳姫を出迎えに居並んでいた長尾側の重臣たちは皆、一様に素知らぬふりを装っている。中には、いきなりの主君の暴挙に渋面を浮かべている者もいないではなかったが、面と向かって邦昭に意見しようとする家臣はいなかった。
　気に入らぬ者は、たとえ功のある家臣であろうと、その場で手討ちにする―、邦昭の悪行の噂に関しては枚挙に暇がないが、やはり、それも真実だったのかもしれない。