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ビターチョコレート
第8章 愛の巨大幻想。
「理恵子の言う通りだよ。
でも、子供は捨てられない」

子供は捨てられない。
簡単に私は捨てられる。

もう、電話口の情けなくて別れを懇願する、
スウの言葉を聞くのも辛かった。


「分かったわ。
さようなら。
豚のところに戻れば?
そして豚に支配されて、
子供は大事と念仏のように唱えながら、
一生過ごすといいわ。

そして私と言う人間に、
消えない傷を背負わせた事を、
どうぞ忘れずにね。

覚悟のない自分がやってしまった過ちを、
ずっと、背負ってゆくといいわ。

私は‥‥‥‥‥‥
情けないあなたなんか、いらない‼︎」

理子は、最期に醜い言葉をスウにぶつけた。

「すまない。
理恵子。
理恵子は幸せになってね。」

「バカじゃないの?
あんた?

あんたの落ち度で不倫は見つかったのよ。
それでいて、見つかった後は、あっさり女房のところに帰る、
情けない男の癖に幸せなってだって?

笑わせないでよ‼︎

そこまでして、最期にいい男で居たいわけ?
アホじゃないの?

言いなり人生のあんたなんかより、
幸せになるに決まってるでしょ?

あんたに幸せ願われなくてもね、
私は、幸せを探す。

あんたは豚女房のとこに、
あっさり帰って、決められた道を、不本意で彷徨う事しか出来ない、可哀想な人。

どうぞ窒息しないで下さいね?」

理子は、悔しさをぶつけた。
もう、スウとの幸せは叶わないのだから‥‥

言っている自分が一番惨めで、醜いのも、
分かっていた。
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