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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第3章 参
 もし、お民が帰ってきた時、源治がここにいなかったら、あの女は泣くだろう。とことんお人好しで、優しくて、いつも自分より他人のことばかりにかまけている女。
―人生で最高の、たった一人の女に俺は出逢ったんだな。
 お民こそ、俺のたった一人の女だ。だからこそ、お民との約束を破るわけにはゆかない。
 源治は明かり取りの窓から差し込む細い光に眼を細める。
 紫紺の夜空に琥珀色の眉月が浮かんでいる。どこからか、かすかな梅の香が夜風に乗って運ばれてきた。

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