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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第7章 第2話・弐
     【弐】

 町人町でもとりわけ賑やかな大通りの一角に、小間物屋〝縹や〟がある。構えも小体な店で、取り扱っている品々もけして高級品ではない。だが、良質で安価な品が揃っているとくちコミで広まり、殊に若い娘たちに人気があった。
 その日、お民はその縹やの前に佇んでいた。とはいっても、何もこの店に用があったわけではない。今日は新しい仕事を探して、何件かの口入れ屋を当たってみたのだ。
 石澤嘉門の屋敷から戻って既に半年がこようとしている。その間、お民は徳平店にずっといて、特に働きに出てはいない。しかし、左官の源治の収入だけでは正直、夫婦二人暮らしてゆくのがやっとというところだ。これまで続けていた造花作りの仕事は当然ながら、止めざるを得なかったため、新たな仕事を探す必要に迫られていた。
 元々、あの仕事は口入れ屋三門屋から紹介されたもので、嘉門との縁も三門屋の主人信吾が取り持ったものだ。三門屋と拘わることがなければ、お民は嘉門の屋敷に妾奉公に上がることもなかった―。
 三門屋がお民に嘉門の妾になる話を紹介したのは、まだお民が最初の良人兵助を喪って間もない頃のこと。その話をお民が泣きながら源治に告げたときから、源治は三門屋を毛嫌いしている。これまでにも、お民が三門屋から相変わらず仕事を紹介して貰うことを、ひどく厭がっていた。
 流石に、お民もこんなことになってからは、あの三門屋信吾とは一切の拘わりを絶っている。源治に再三言われても三門屋に出入りしていたのは、折角見つけた造花作りの内職を失いたくなかったからだ。が、今では、何故、源治の勧めに従っていなかったのかと悔やまれる。もし、もっと早くに三門屋との拘わりを絶っていれば、嘉門と出逢うこともなく、三門屋が間に立って、あのような卑怯なやり方で妾奉公に上がることを余儀なくされることもなかったのに。
 幾ら悔やんでも、もう遅い。だが、いつまでも過ぎたことばかりをくよくよと悩んでいるのは、お民の性分には合わない。過去は過去として、これからの生活のことを考えねばならない。生きるためには働かなければならないし、飯を食べるためには金が要る。
 ということで、徳平店に戻ってきて、お民はすぐに働きに出ると源治に言った。しかし、源治は即座に言った。
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