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喘ぐなら、彼の腕の中で
第3章 不変と豹変


「おはよう、綾瀬」


芹澤さんの穏やかな笑顔と、爽やかな挨拶で私の1日は始まる。
前日の夜にどれだけ激しく抱かれても、それは変わらなかったけど。


「……おはようござ、います」


電話で彼女じゃないって告げられた翌日の今日は、さすがに気まずい雰囲気が漂うかなって思ってたのに

予想に反してというか、拍子抜けしてしまうほど
芹澤さんの態度はいつもと同じだった。


「今日は終日社内業務だっけ?」

「はい、新宿店の図面が昨日届いたので、最終チェックします。
諸々堪ってた仕事を片付けようかと」

「了解。
俺は午前中、看板の件で業者と打合せがあるんだけど……」


仕事内容と予定の確認。

手帳を広げてペンを走らせる芹澤さんを、じっと見つめた。


ふわっと軽い前髪が、目のすぐ上までかかっていて
芹澤さんが瞬きをするたびに、毛先が少しだけ揺れる。


眼差しも、表情も、仕草も。

胸がキュンとするほど優しくて、切なくなってしまう。


「綾瀬?」

「……!
あ、ご、ごめんなさい」


ハッと我に返って、慌てて自分の手帳に視線を下げた。

聞きたいこと、言いたいことはたくさんあるのに
こうして見惚れてしまうほど、私の心は芹澤さんで溢れているんだ………



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