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喘ぐなら、彼の腕の中で
第18章 超ズルい


「ふふふ♡
幸せそうな顔しちゃって♪」


胸に顔を埋める沙月の頭を撫でながら、優しく微笑む莉央。

おふくろは満面の笑みで2人の姿を見つめている。

砂浜の入口のここからは、風と波の音がするだけで会話は聞こえてこないけど

そんなの聞かなくても分かってしまう程、お互いを想う気持ちが伝わってくるようだった。


「翔太、1本頂戴」


タオルを顔から外して、ポケットから煙草を取り出すと
おふくろが左手を伸ばしてきた。


「は? 吸うの?」

「ええ♪
今が最高の一服になるに決まってるじゃないの」

「禁煙御殿にした張本人のくせに」

「特別な日だけはいいの。
母さんだけの特別ルール♪」


なんじゃそりゃ……

呆れる俺からライターを奪うと、おふくろは空に向かって煙を吐く。


……細めたその目からは、既に涙は消えていて

この年になって初めて見たおふくろの泣く姿は、幻だったんじゃないかと思ってしまう。




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