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喘ぐなら、彼の腕の中で
第5章 忘れさせて


何よ、それ……!


胸に熱い何かが込み上げてきて、いっぱいになる。
心なんていらないって言い放った、歪んだ男のくせに……


「……莉央…」
『くだくだするな。芹澤の前での公開プレイに変更するぞ』
「~~!?」
『早く来い』


最後はいつもの口調で言い捨てられて、電話が切れた。


“ 泣いてるだろ、心で ”


「……っ」


芹澤さんと何を話したか、今どんな状況なのかも伝えていないのに
私の今の気持ちを分かってくれたような、核心をつく言葉。


「なんなのよあいつ……」


目的が体だけの関係に、そんなの必要ないのに。


呼吸を整えてから、大通りへふらふらと足を進めて
すぐに停まったタクシーに乗りこむ。

会社に近付くにつれて
忘れていた熱さが、再び体の奥から溢れてくる気がした。




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