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花の咲くころ
第2章 な
そして数分後。昨日と同じようにあたしの部屋のドアが静かに開いた。

「は、な」

あたしの名を呼んだ駿ちゃんは布団の端に腰かけて
夢ごめん。と言う。

あぁ・・・・
昨日の繰り返しだ。

あたしの心が小さくつぼんだ。

今さっき洗ったばかりの冷たい手が
優しくほほを撫でる。
冷たくてビクッとしないようにするのが精いっぱいで。

そのまま本当に触れるかどうかのキスをした。

ゆっくりと頬から手を離して。
ゆっくりと私から身体を離した。

ほのかなお酒の匂いがして。
ああ、駿ちゃん飲んできたんだ。

私がいるのに早く帰ってきてくれなかったんだ。
今日は最初の夜なのに。
飲む時間があったら帰ってきてくれてもいいのに。

そんなことを言う権利なんて微塵もないのに。
それでもそう思っちゃうあたしは、わがままなのかな。

無理やり押しかけた同居だから。
あたしには何も言う権利なんてないから。
声にはもちろん出せなくて。

でも、涙だけはあたしが止めるのも構わずに
ずっとずっと流れた。

カチャンカチャンと食器にスプーンが当たる音がして。
あぁ、あたしが作ったご飯。食べてくれてるんだ。

それが嬉しくて、悲しかった。
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