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吼える月
第5章 回想 ~終焉そして~
 

「次にシュウ、お前行け」


「は!? 次はお前だろうが、サク!!」


「シュウ。俺にもしもの時は、お前が姫様守ってくれ」

「馬鹿言うな。お前は姫の護衛だろ!? 任務放棄は許さねぇぞ、サク……警備兵を代表して言うんだ。お前が次だっ!!」


 そこにシュウの男気を感じたサクは、ため息をついて頷いた。


「すぐ……抜けるからな」

「ああ。早くしてくれよ……?」


 強面のシュウが屈託ない顔で笑う。


 ……彼がなにを秘めているのか、それを知らずして……サクはユウナの待つ壁の穴の向こう側に上半身を入れた。

 そしてあともう少しというところでシュウが、突如大声で叫んだ。



「俺……サクに憧れてた。すげぇ強いのにそれを自慢せず、人情味あるところがすげぇ好きだった」


「と、突然なにを……っ!!」



「正直に言う。俺……ユウナ姫が好きだったんだ。

俺の故郷揺籃で見かける姫に一目惚れした!!

もっと近くで護りたくて、だから警備兵に志願したんだ」



「シュウ?」



 それは初耳だったが……今言うべきことだろうか。

 そう訝り、後ろを見ようとするとシュウの怒声が飛ぶ。



「いいからお前は黙って動け!!」


 なに突然、気を昂ぶらせたのか。

 だが一刻も早くシュウに続けねばと、サクは渋々と穴の出口に向けて体を動かす。


「最初お前にはすげぇ腹立った。ハン様の偉光を借りて、姫に近づくなんてとんでもねぇ奴だって思った。

だけどお前の実力と性格思えば、姫の相手にはお前しかねぇと思った。姫の近くにいる資格があるのもお前、姫とお似合いなのもお前。

だから俺は、お前だから姫とうまくいくことを応援してたんだ。昔から!!」


「………」


「好きな友と好きな女の幸せ願い、身を引くお前の辛さは、俺が一番理解してると思う。

本当は……酒でも酌み交わして、もっとお前と……こんな話をしたかったなっ!! 今になってすっげぇ後悔」


 なにかシュウの様子がおかしい。


「よし、シュウ。抜けたぞっ!! 早く来……」



 そして穴から頭を出して、シュウを促そうとしたサクは見た。

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