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吼える月
第30章 予感
 

「ほっぺもずっと冷やしてたんだけど、まだ、じんじんする…」

「まあ……」


 冷やしても、まだ不自然なほどに膨らんでいるイルヒの頬と、唇に、同性のユウナは哀れんだ声を出した。


「テオンに叩かれた後、鏡見てびっくりさ。化粧を白粉の壁を削るようにしてとって何回も洗ったのに、顔の形が戻らないんだ。どうすればいいのか悩んでいるというのに、あいつったら、からかって笑うんだっ」


 イルヒはそちらを見ないで、部屋の外を指だけで指した。


「だからあたい、お嬢にいい案を貰おうと、ここで待ってたんだ……」



 そこから現れたのは――。



「小猿の化粧…くくく、あはははははは!」


 腹を抱えて笑い転げるサクだった。


「おはようございます。このイルヒの顔! 朝からどっきりでしょう? この上に白粉と頬紅までしているのなら、テオンが気の毒で気の毒で。あはははははは!」

「どっきりなのは猿じゃないか! なんで朝早くからここで、寝転がってもぞもぞしてるんだよ!」

「鍛錬だよ、鍛錬!! 武神将たるもの、1日だって鍛錬を欠かすこと……姫様、どうしました?」

「お嬢!?」


 サクとイルヒは、泣きだしたユウナに、慌てた声を出した。

 ユウナは涙声で言った。



「よかった、サクに置いて行かれたかと思った……」

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