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吼える月
第31章 旅路 ~第三部 朱雀の章~
 

「くっそ……可愛く寝たって、俺の機嫌直りませんからね! 俺がどんな想いで……」


 サクは口を尖らせながら、ユウナの頬を指先で突いていたが、


「ん……シャク……離れちゃ嫌……。……大好き……」


 破壊力満点の言葉に不意打ちを食らい、サクの顔は見る見る間に真っ赤になった。


「くそっ……くそっ! こんな時にそれ、反則だって! なんだよ、なんでこんな可愛いこと……」


「ん……シャク……しゃむい」


 サクはそして思い出す。


「あったかいの……どこ……?」


 ユウナの寝相が悪いことを。


「待て、待て!! うわ、駄目だって、そんな体勢……起きて下さいっ、流石に俺、耐えられそうに……姫様!」


 サクの首に唇を宛てながら、手足をサクに絡ませて暖を取ると、ユウナはにっこりと微笑んだ。


「ん……ぬくぬく……これ硬くて熱い……にゃに…?」

「ちょっ、どこ触ってるんですか! 俺をこんなにさせたのは姫様なんですよ、今から鎮めないといけないんです、ああ、掴まないで握らないで……だから触るな!! 切羽詰まってるんだよ、こっちは!!」

「ふぇ……」

「ああ、すみません。泣かないで、ああ……じゃあ好きなだけ握っていていいですから!! 俺、我慢しますから!!」

「んふふ……。しゅりしゅり……」

「しなくていいですから!! 握るだけにして下さ……擦らないで下さいってば! 叩くな!!」








「あいつ、なにひとりで叫んでるんだ?」


 時間で戻って来たシバは、不審者を見るような眼差しで叫び続けるサクを遠目に見た。


「さあ……。お姉さんがなにか握ってて、お兄さんが怒ってるみたいだけど……」


 テオンもそちらを見ながら、首を傾げた。

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