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吼える月
第31章 旅路 ~第三部 朱雀の章~
 


「だけどまあ、仲直り出来たみたいだね。お兄さん、声にも元気出たみたいだし。いつものように戻れた感じだけど」


「……なあ、テオン。なんであいつ、突然腹筋鍛えだしてるんだ?」

「さあ? お兄さんはいつも予測不能なことやり出すから。頭いいのか、馬鹿なのか……あれ? お姉さん握ってるの……」


 ふたりは目を凝らす。


「………」

「………」


 ようやくユウナが掴んでいるものがわかったふたりは、同時に顔を赤く染めた。

 ……テオンは恥ずかしさで。シバは怒りで。


 そして、衝動的に大声を上げてサクに歩んだのは、シバだった。


「せっかく気を利かせてやった時間に、お前なにやってるんだ!! こんな野外で、卑猥なことをしろと誰が言った!?」

「はあっ、シバ!? お前なに勝手に覗いて……うわ、何だよ、殺す気か!? 姫様、シバに斬られそうだから、こっちの手も離して…痛っ、俺の大事なトコ、もぎとらないで…」

「人がいるのに、卑猥なことを堂々と続けるな!! なんで玄武に連なるものは卑猥すぎるんだ!! …その性根、叩き直してやる!」

「お前ひとの国の神獣に、なんてこと……わっ! 本気でかかってくるなよ、シバ!」



「ああ……お姉さん。はい、あっちで寝ようね。ここにいたら、お姉さん切り刻まれちゃうから」

「う……ん、ちゃむい」

「え……」


「こらああああ!! テオン、姫様襲うんじゃねぇぇぇぇ」

「ち、違うよ、お姉さんが勝手に……うわああああ」

「ん……ちっちゃい……」

「姫様、握るのなら俺のを」

「だから卑猥なことを言うな!!」

「ん……うるちゃい。すぅすぅ……」


「お姉さん、最強かも……」


 引き攣って苦笑するテオンは、ユウナに強く握られたまま、そしてサクはシバに追い回されて、……猛ったものの急速鎮静に成功したのだった。
 
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