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吼える月
第33章 出芽

 

「一年ぶりに現れたスンユは、僕達がいない間に、なんで蒼陵に?」


 テオンの問に、シバが答えた。


「ああ、奴はオレがジウの子供だと知った上で、青龍の鍵を狙ってきた」

「スンユもリュカと同じ事を!? まさかリュカだったとかは……」


 サクは驚いた声を上げた。


「違うわ。そっくりであたしも最初リュカだと思ってびっくりしてしまったけれど……スンユは、リュカを凄く嫌っていたの。色々なことを知っているから、イタ公ちゃんが警戒して襟巻きになっちゃって……」

「それか! イタ公が一方的に会話を遮断したのは!」


 サクは青龍殿に赴く最中、イタチとユウナと連絡が取れなくなった状況を思い出した。


「あ? もしかして姫様が俺と心で会話している時に、"リュ"と言ったのは……」


「よくわからないけれど、リュカが来たとサクに伝えようとしたのが、それかしら」


「そのスンユはどこに?」

「それがね、砦の子供をイタ公ちゃんとシバが守る海に子供に飛び込んで貰っていた時に、砦にスンユはいたんだけど」

「あの時海の中に"戻った"大人は、お前とギルだけだったぞ?」

「ええ、シバ。ギルはあたしを助けるために怪我をして戻ったけれど、そのギルも言ってたの。スンユに気をつけろと。スンユはね、餓鬼が湧いて出てくる中を、平気で出て行ってしまったのよ。餓鬼はスンユに見向きもしなかった」

 サクはワシに乗って上空から見下ろしていた時、砦に船が止まっていたのを思い出す。もしかすると他に小舟かなにかで逃げたというのだろうか。餓鬼とゲイがいる、海を――。


「今まで忘れていたわ。それでえっと……なんでスンユの話になったんだっけ? えっと、そうだわ一年前の蒼陵にスンユがリュカと来たという話だったわね」


 リュカと同じ顔を持ちながら、倭陵大陸を統べる皇主の三男。

 リュカは、ただの光輝く者ではないというのか。

 
 スンユとは何者なのか。

 穢れた魔である餓鬼がなぜ襲わないのか。


 スンユとは、神獣が警戒するほどの謎めいた男であり、玄武からは今具体的な意見を聞けないけれど、ユウナからその話を聞いた時点で、サクも警戒しないといけない危険な人物だと、警告を受けた気になった。


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