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吼える月
第33章 出芽
 

 そして半刻。


「サク、蠍動かないわねぇ……」

「えぇ姫様、ラックーと見つめ合っているだけですねぇ……」


 疲れ果てたラクダがいじけた。


『だから、恥を忍んで言うたのに……』

「ラックーが駄目で実は俺ならいいとか」

 サクは笑った。

『ありえぬだろう。我との交流の年月とは違う』

「無駄に交流を重ねなくても、ここは俺の武神将ぶりにびっと……」


 サクは蠍に向かって言った。


「なあ、お前らが進めないという文字があるのはここなのか?」


 すると蠍の鋏がぐいと持ち上がり、一度前傾した。


「まあ、サク!」

『まぐれだ!』


「だったら、文字ってどこにあるのか教えてくれねぇか?」


 蠍の鋏が再び前傾し、蠍が動き出す。

 そして石の建物の一点を指して、動きを止めたのだった。

 それはまだ少し泥がかかっている部分だった。



『なにゆえ……なにゆえあの小童には……』


 ラクダが呆然として鼻水を垂らす。

 ユウナが感動してサクを褒め称えれば、サクはまんざらでもないような顔をして、得意げに胸をそらせたが、すぐに剣呑に目を細めた。



「だったら。イタ公を助けるための溶岩が、ヨンガの墓にあるってことなのか!? 溶岩って棺に入るものなのか!?」

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