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吼える月
第33章 出芽
 


「ラックー、これに見覚えはないのか? こうやって朱雀の模様を施して、朱雀を称えているんだぞ?」

『ふむ……』


 ラクダはじっと見たが、頭を横に振った。


『まったくわからぬ。だが似たようなものがあるとすれば』


「「すれば?」」


 サクとユウナに、ラクダは言う。


『棺だ』


「棺だって!? じゃあここは墓場ってことか!?」


 サクは大きな石の建物を見た。


『そうだ。緋陵の民は石の棺を埋葬するのが習わし。これだけの大きな棺を使うものは、祠官か武神将とみる。だが我の記憶によれば、灰色の石を使うのは咎人のはず。普通は赤く染めた石を使うゆえに』

「だとしたら……」


 サクは爆ぜたように叫んだ。


「ここはお袋の妹、ヨンガの骸があるかもしれねぇってことか!?」



『然り』

「ラックー、蠍に聞いてくれ。文字があって入れなかったというのは、ここの場所のことか。そして文字が書かれているとしたら、どこか」


『……すまぬ』

「は?」


 ラクダは落ち込んだように頭を垂らした。


『我の言葉は蠍には通じぬ』


「はあああああ!? 友達だったんじゃないのか!?」

「蠍は、ラックーの言うことをきいて、あたし達を乗せてここまで……」

 
 サクとユウナの言葉に、さらにラクダの頭は下がった。


『なんとなく、だ。なんとなく通じていたのだ。蠍は我らをここに連れたのは、あの幼女が指示したからだ。だから細かい指示は恐らく』

「だったらあのチビの方が優秀ってことじゃねぇか!」

『ぶへぇぇぇぇ! 我の方だ!』

「威張るな! 鼻水飛ばすな!!」


「ねぇ、ラックー。駄目元でやってみたら? 気心知れている蠍なら、きっとラックーの言いたいことをわかってくれると思うの!」

『ふむ……』

「真心よ、真心! あたし達だって、言葉が通じない大きな鷹に協力して貰えるんだから、朱雀のラックーならきっと大丈夫よ! 真心!」

『そ、そうだな……』



 
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