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吼える月
第34章 連携
 

「うんうん、わかった。間違っただけだね、うん。で、ユエの言う『変換表』ってなに?」

「お歌!」

 ユエは、目を輝かせた。ご機嫌は直ったらしい。


「歌を全部書こうとしたの?」


 ユエは頭を横に振った。


「変換表! あの子が言ってたの!」


 シバが目を細めた。


「ユエが歌ったあの歌が変換になるの?」

「うん!」

「それがその緋陵で生まれて君に歌を歌ったあの人がそう言ったの?」

「うん!」

「どうやって?」

「そのまんま! そのお歌の通りに書けば、あの文字がわかるの!」


 ユエは石の扉を指さした。



 

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「ユエが歌っていたのを、全部わかるように書き出してみた。意味がどうとでもとれるところは、漢字にはしていないけれど」


『朱雀の羽は裏表。我が国は鏡となり、鏡は我が国となる。

我が力は水に覆われ、水は地となす。即ち我が力地には及ばず、我が力も地となすが、もとより地はきとなす。

我の業火によりて木々の葉は夜に隠れ、眠りもまた闇に消ゆ。田は死、野は無となり、汝らのすは我が手に落ちる。

我が尾は目となり、我の頭は尾に向くが、終焉は開始となる』


「意味はさっぱりだ。羽が裏表? 鏡は我が国? 水だの地だのは相克関係だと思う。火で皆がなくなったとしても、"す"って? 終焉は開始?」


 テオンは腕を組んでうんうん唸り始めた。


「石に刻まれている神獣文字はどんな言葉なんだ?」


 テオンは地に書き始めた。




 てなとりとむちでいろむむうよりちのもるげしまさめみやがわ



 意味のわからない、文字の羅列――。


「これが意味をもつのかね、意味がわからない童歌で」


 遠いところを見ていたテオンが、やがて顔を両手で挟むようにしてパン!と叩くと、理知的な光を目に宿して取りかかった。


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