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吼える月
第36章 幻惑

 
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 じりじりと肌が焦げるような不快さに、ユウナは目を覚ました。

 一面の蒼穹に浮かぶ、目映い太陽に目を細める。
 
「え……ここは……」

 今までいた、蠍によって地下に連れられた、巨大なヨンガの棺の中ではなかった。
 
 ここは、どう見ても砂漠。
 外界の砂漠の上に、彼女は横たわっていたのだ。

「どうして……。皆は!?」

 ユウナは体を起こした時にざざと砂が零れ落ちるのを見て、慌てて首元に巻き付いたままの白イタチから砂を払った。
 
「イタ公ちゃん、砂や熱さにやられていないわよね? 大丈夫かしら、イタ公ちゃん」

 しかし小さな口からはくしゃみが出るではなく、両目は閉じられたまま。それでも体は温かく、鼓動が感じられる。

 とりあえずユウナの細い指先で弄るようにして、砂埃を落とせば、再びふわふわの毛並みが見えてきて、ユウナは胸を撫で下ろす。

「さあ、皆を起こしに行かなきゃね。ええとまずは……」

 ユウナの頭の中に、巨大な茶色いなにかが思い浮かんだが、それがなにかわからなかった。

「夢でもみたのかしら」

 頭の中になにか白い靄がかかっているが、その奥にあるのがなにかを追及するよりもまず、サクの姿を見つけて駆けつける。

「サク、サク、大丈夫? 起きて?」

 だがサクは体を揺すっても起きず、ユウナはその精悍な頬を指で突く。

「ん……」

 寝返りを打ちながら、無防備な寝顔を見せるサクを、ユウナは安らいだ顔で見つめた。
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