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吼える月
第8章 覚悟
 


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 星見が告げた凶々しい予言のあくる日。

 黒陵国の小さな街、黒崙に、街長による招集を命じる鐘の音が鳴り響く。


 それまで、ろくに黒陵にて姿を現わさなかった皇主の犬たる近衛兵が、突然に黒崙に立ち入り、黒陵の祠官を通さずして勝手に黒陵の姫の婚儀の中止や玄武の武神将の息子を引き渡すようにと圧をかけてきたことに、黒崙の民が憤っていた最中のことだった。

 その鐘は、存亡の危機が訪れぬ限りは耳にすることはない、いわば"鳴らずの鐘の音"。

 なにより黒崙には最強の武神将がいる。

 人々は不安と怯えを顔に出しながら、街長邸の大きな中庭に集う。


 街長の横にいたのは、帰還したばかりの玄武の武神将。


 いつも飄々として気さくであった彼の顔は険しく強ばっており、なにより誰もが驚いたのは、彼の片腕がなかったことだった。


 彼は皆に告げた。

 今し方、彼が帰ってきたばかりの玄武殿の有様を。



 その時、彼の息子が飛び込んで来た。



 ~倭陵国史~



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