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吼える月
第14章 切望
 



 しかし――


「な!!!?」


 手応えがないままに、それは消えた。


 まるで陽炎かなにかのようにゆらりと揺らめきながら、餓鬼や警備兵とともに。



 つまり、これは――。



「幻影――だと!?」



 ハンが吼えた。



 目と足を失って、それでもそれは幻。

 本体は、本体はどこにいる――!?



――ならばそれは無理だな。


 金の男の声が蘇る。


――見せられる者も此の世にはいない。





「サク、サク――っ、早く行け。早く船に乗れ!! 海原は玄武の胎内、おいそれと手出しは出来ないはず。だから早く、早く――っ」



 本体が、サクを襲う前に――。




 その時だった。




「ハン――っ」


――お前は!?



 サラとサクが同時に叫んだのは。


 ハンは反射的にサラの声がした方向に振り返る。

 その片目に映ったのは――。




「サラ――っ!!!!!」



 それは……サラの胸に刃を貫いた、リュカの姿だった。


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