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吼える月
第15章 手紙
 

 それは初めて強い酒を飲んだ時のような五臓六腑に染み渡る熱さ。

 苦しくてだけど高揚して……泣きたくなるほど切なくて。



「……親父……?」



 サクの脳裏に、父の……今までの思い出が走馬灯のように駆け巡った。


――よぅ、馬鹿息子。


 憎たらしくて大好きだった、自慢の父親。



 これは……父に渡した力だ。

 父から譲り受けた、すべての力だ。


 そして……父の"すべて"を奪い取った力だとサクは本能的に判断した。



 父は――


 父の気配は――。




 ――……ない。

 どこにもない。






「どういうことだ……どういうことだよ、親父――っ!!」




 唯一父を感じられるのは、体内に注ぎ込まれる力のみ。

 ……この世界に、ハンの気配はなくなっていた。



 その意味することはただひとつ。


 黒陵国の巨星、玄武の武神将ハン=シェンウは堕ちたということ――。



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