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吼える月
第15章 手紙
   

――サクは……特別なの。
 

 俺はなんて単純で、馬鹿なんだろう。

 姫様に恋愛感情があると言われたわけではねぇのに。


 そう思いつつ、自然に込み上げてくるものに鼻の奥がつんとなった。


 同時にリュカをも憂う。

 聡いリュカは……なにを思ったろうか。


 それでも今は――。


 サクの手がおずおずと、頭を撫でるユウナの手を掴む。


「……そこまで一緒にいたいのなら、どうして俺を突き放して、あんな手紙一枚で解雇したんですか」


 躊躇うようなその手を、逃がさないと言うように指を絡ませる。


「たとえずっと一緒に居れたとしても、サクが不幸になるのは嫌だった。サクには帰る場所がある。あたしのもとか、黒崙のハンやサラ、ユマのもとか……どう考えても将来性があって幸せになれるのは、あたし以外の場所だか……っ、サク!?」


 それはサクが、絡めたその手を口元に持っていき、ユウナの指の一本一本をひとつずつ丹念に口に含んだからだった。

 悩ましげな、男の顔で。

 そこに、サクに抱かれた記憶が呼び覚まされ、びくりとして離れようとしたユウナの腰を、サクのもう片方の手がぐっと引き寄せた。
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