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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~ 
 
 
 

 同時期――。

 海を眺め続けるユウナの斜め後ろでは、サクが酒盛りをしている商人達に引き留められて、色々からかわれていた。

 ふたりで、教えた絶景場所に赴いたことを知っている彼らは、その感想とどんな甘い雰囲気になって、なにをしてきたのか知りたくて、うずうずして待ち構えていたのだった。


「兄ちゃん、おじさん達は刺激に飢えているんだわ。だからさ、俺達の"男"が奮い立つような、いい話をしてくれよ~。自慢の嫁さん、どうだった?」

「美人の嫁さん、兄ちゃんに寄り添って、とろんとしてきたか? 初夜より凄いことしてこれたか? まあまあまずは、酒でも飲めって」


 赤ら顔で、サクを質問攻めにして、サクは酒まで飲ませられる。


「いいだろう、んなこと!! 秘密だよ、秘密!!」

「秘密~!? ハジメテの嫁さんを悦ばせる自信ないから、初夜のいいやり方を教えてくれって言ってきたのはどこのどいつだ?」

「し――っ、し――っ!!」


「どこを攻めれば女は悦ぶのか、さんざん聞いていった奴が、ちょっと初夜がうまくいった途端、一丁前の男のフリか!? それなら嫁さんに聞いてやる。おーい、嫁さん、旦那からどこを――」

「黙れったら、よ、よよよ嫁は照れ屋なんだから、放って置いてくれ!!」


「「「がはははははは」」」



 警備兵時代から、いじられ、からかわれるサクの立場はまるで変わらぬらしい。

 サクがどんなに強かろうが、どんなに美貌を持とうが……サクが敵とみなしていない相手は、そのサクの気安い接し方に影響されてしまうらしい。


 しかも相手は酔っ払いの集団だ。

 サクに下世話な話題ばかり突きつけ、きりがないために仕方が無く適当に話を合わせながら……ユウナに聞こえていないことを祈るサクである。


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