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吼える月
第21章 信愛
 


「きゃっ……」


 その切換を感じ取ったユウナが短い悲鳴を上げたのは、サクがユウナの体を横抱きにしたからだった。


「な、なに、なになになに!?」


「ちょっとだけ……。姫様、黙ってて貰えます?」

「え?」


 サクが、切なげに目を揺らしながら口元で笑いを作った。


「我慢してたんですけどね? だけど……この心を惑わせる綺麗な髪で。綺麗な項を無防備に見せて、こうまでシバシバ言われると。俺だって……面白くねぇですよ」


 綺麗……、この銀髪を。

 魔に穢れた証として、誰もが嫌うこの髪の色を。



「不安に……なる」



 サクの熱い唇が、くちゅりとユウナの首筋に吸い付いた。


「ちょっ!!」



「姫様をここに置いて行きたくねぇ。こんな無自覚の姫様が目の前でちょろちょろされたら、まともな男だったら、触るだけじゃすまなくなる」


 サクのぬるりとした舌が、ユウナの首筋を往復して、項まで滑り込む。


「こうやって、愛でて啼かせたくなる……」


「ぁあ……んっ」


 ぞくぞくとした痺れが下腹部から迫り上がってきて、ユウナはぎゅっとサクの服を手で掴むと、ぶるりと身を震わせながら喘いだ。


「姫様を置いてジウ殿の元に行くか、ジウ殿の処に行くのを諦めてシバに協力するか。その二択の結論が出るまでとここに放り込まれましたが、音を遮断できる部屋でよかった。こんな可愛く啼く姫様を、誰にも聞かせたくねぇ……」


 肌を心地よく滑り落ちるのは、サクの熱い舌か。柔らかな髪先か。

 それとも――。



「姫様は、俺の姫様だ。この可愛い声を聞けるのも、このとろりとした顔を見れるのも、俺だけだ。そうでしょう?」


 ぎらぎらと滾るような目を見せて、独占欲を見せてくる……サクの言葉なのか。
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