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吼える月
第24章 残像
  

「海鳴りにも似ているけれど、違うよね。僕もこれ苦手。昼間でも気持ち悪いし。仲間がいたらきっと泣き出す子もいると思う。海の魔物かな」

「魔物の声が青龍殿の結界を解けるのなら、蒼陵どうなるよ? なにより青龍殿の内部からも、"仕掛け"とやらで渦操作できるのなら、別に人外の力は必要ねぇだろうし。制御出来るということ自体、俺はそのからくりわからねぇけどよ」


「あははは、お兄さん、玄武の武神将なのに勉強不足だね。経験不足、学習不足。若いなあ」

「うるせえよ、突然年上ぶるなよ、テオン。そういうお前はどうなんだよ、無駄に歳とってるお前は、渦が仕掛けで制御出来る理由がわかるのか?」


「さっぱり。あはははは。やっぱりお兄さんといるのは凄く愉快で、心強いなあ。よし、無駄口叩いている間に、渦が弱まり始めたよ!!」
 

 テオンが凜然とした声を上げた瞬間、サクもまた、青龍殿を取り巻く渦に変化を見た。


 赤き月が落とす凶々しい光を飲み込むように渦巻いていた水の勢力が、次第に弱くなっていく――。



「渦がなくなれば、音も消えるのか」

「そう、不思議だよね」



 そして、静謐の最中残るのは――。


 海の上に浮かぶ……赤い光に照らされた建物。


 ジウの息子であるシバや血縁関係にあると思われるギルですら、弾いていたという、蒼陵国の要の館――。



 各国、神獣を祀る建物は、神獣の色に塗られているという。

 白昼の元では青色に染まっていると思われる外観を持つこの建物は、黒い玄武殿のように離れや紫宸殿がなく、やけに細長く、塔のように先の尖った形状の本殿のみがそびえ立つ。


 無論、外敵監視の見張り台もない。

 ……ギルとシバが敵対しているのに、だ。


 そこまで海からは侵入できない自信があるのか。


 それともギル達の反目がわからないのか。

 わからぬふりをしているのか。
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