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大蛇
第1章 プロローグ
男は、欲望に勝ったつもりでいた。
男の名はルロイ・ソガといった。
漆黒の髪に黒曜石の眼を持ったこの男は、ジルセイ国の軍人である。
彼は休暇中の一か月間山に籠り、来るべく次の戦のために心身を鍛えていた。
彼はあらゆる欲望や誘惑を断ち切り、たった一人で洞窟の中に寝泊まりした。
山にやってきた当初は恐怖や孤独を抱いたが、今ではそういった感情をコントロール下に置くことが可能になった。
彼は野生動物のように常に神経を尖らせ、自分に迫る危険を冷静に判断していた。
そして彼は食欲をも制御することができるようになった。
獲物を仕留めたり木の実を採取したりと、ルロイは死なない程度の最低限の食事で命を繋いだ。
彼にとって食べることは快楽などではなく、生きる手段に過ぎなかった。
しかし、一つだけ懸念事項があった。
ルロイは二十歳の若い肉体に閉じ込められていたので、どうにも性欲を抑えることが困難だった。
彼は生まれてこの方、女性の体を味わったことがなかった。
そのため、早く女を知りたいと心の奥では熱望していたが、彼の鋼の理性がそれを拒否していた。
女などに現を抜かす者は愚かであると、ルロイは考えていた。
実際、彼の周りにも女性問題で身を滅ぼすような欲まみれの連中が多く、ルロイは彼らを心底軽蔑していた。
とはいえ、地位や名誉、財産、そして家族までをも犠牲にしてまで野郎共が耽溺する女という存在に、少なからず興味があった。
静かな夜、たき火の炎だけが色を持つ暗がりで、ルロイはよく無意識のうちに艶やかな女の面影を思い浮かべた。
彼は甘い夢想に気が付くと、頭を振ってそのイメージを掻き消した。
もちろん、不埒な想像で自分を慰めることなどもっての他だ。
ルロイは、色欲を忘れようとその後も努力を重ねた。
まず、食事を極限まで絶ち、性欲を感じるどころではない状態にまで自分を追い詰めた。
しかし、それは逆効果で、飢え死にしそうになればなるほど、不思議と精力が漲った。
そこでルロイは、今まで以上に獲物を倒すことに専念した。
時には、短剣一本で彼よりもずっと大きい化け物のような猪に立ち向かうこともあった。
彼は日に日に強く素早くなった。
男の名はルロイ・ソガといった。
漆黒の髪に黒曜石の眼を持ったこの男は、ジルセイ国の軍人である。
彼は休暇中の一か月間山に籠り、来るべく次の戦のために心身を鍛えていた。
彼はあらゆる欲望や誘惑を断ち切り、たった一人で洞窟の中に寝泊まりした。
山にやってきた当初は恐怖や孤独を抱いたが、今ではそういった感情をコントロール下に置くことが可能になった。
彼は野生動物のように常に神経を尖らせ、自分に迫る危険を冷静に判断していた。
そして彼は食欲をも制御することができるようになった。
獲物を仕留めたり木の実を採取したりと、ルロイは死なない程度の最低限の食事で命を繋いだ。
彼にとって食べることは快楽などではなく、生きる手段に過ぎなかった。
しかし、一つだけ懸念事項があった。
ルロイは二十歳の若い肉体に閉じ込められていたので、どうにも性欲を抑えることが困難だった。
彼は生まれてこの方、女性の体を味わったことがなかった。
そのため、早く女を知りたいと心の奥では熱望していたが、彼の鋼の理性がそれを拒否していた。
女などに現を抜かす者は愚かであると、ルロイは考えていた。
実際、彼の周りにも女性問題で身を滅ぼすような欲まみれの連中が多く、ルロイは彼らを心底軽蔑していた。
とはいえ、地位や名誉、財産、そして家族までをも犠牲にしてまで野郎共が耽溺する女という存在に、少なからず興味があった。
静かな夜、たき火の炎だけが色を持つ暗がりで、ルロイはよく無意識のうちに艶やかな女の面影を思い浮かべた。
彼は甘い夢想に気が付くと、頭を振ってそのイメージを掻き消した。
もちろん、不埒な想像で自分を慰めることなどもっての他だ。
ルロイは、色欲を忘れようとその後も努力を重ねた。
まず、食事を極限まで絶ち、性欲を感じるどころではない状態にまで自分を追い詰めた。
しかし、それは逆効果で、飢え死にしそうになればなるほど、不思議と精力が漲った。
そこでルロイは、今まで以上に獲物を倒すことに専念した。
時には、短剣一本で彼よりもずっと大きい化け物のような猪に立ち向かうこともあった。
彼は日に日に強く素早くなった。