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甘く、深く、繋がって
第5章 燻るモノ
「あぁ、もう。そんな顔しちゃだーめ」
甘い甘いテノール。腰に響いて崩れ落ちそう。
「ちゃんと落ち着いてから出て?」
優しい斎藤さんの言葉にただコクコクと頷いて、額に一つキスをもらった。
「じゃあまた連絡する」
「……はい」
あんな事されるのは困るけど、離れるのはさみしくて返事をするのに躊躇した。
フフッと笑う斎藤さん。
「離れたくないね」
コクンと頷く。
「もっと一緒にいられたら良いんだけど、一応俺ここのメイン担当してるんだよね。そろそろ戻らなきゃ」
眉を下げた斎藤さん。こちらまで苦しくなる。

あっ、そうだ。今仕事中。
また忘れてるとかダメダメだ。自分の愚かさが情けない。
斎藤さんも私も!仕事中。

言い聞かせるように心の内で唱えて頷いた。
「大丈夫です。私も戻らなきゃ」
「そうだね。もう大分経ってるから言い訳考えて戻ることをお薦めするよ」

あっ!化粧直しに来たんだった。

チラリと腕時計を見て過ぎた時間に青ざめる。でも、また直さなきゃ……
俄かにワタワタと落ち着かなくなった私に斎藤さんはもう一度キスをして、部屋を出て行った。
「またね、真純」
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